帳簿づけをしたくない理由の一つに
「見たくない現実から目を背けたい」
という動機があります。
しかし、放っておくと、
見えない不安が膨れ上がっていく恐れがあります。
まずは、
見たくないものを見る勇気を持ちましょう。
そこから、現実的な議論ができます。
臭いものにフタをしても、消えない恐怖
独立当初の、大きな失敗の1つは、
自分自身の帳簿づけを怠っていたことでした。
医者の不養生といいますが、
人には帳簿づけをしましょうといいつつも、
自分自身ではしていない、
という状況が続きました。
その理由は、
見たくない現実は見たくなかったからです。
売り上げはほとんどなく、
経費だけが出ていく状況、
というのはもう分かっている中で、
その現実をあえて見てしまうと、
ますます落ち込んでしまうのではないか、
という危惧がありました。
また、
初期投資にもそれなりにお金がかかるわけですが、
それを逐一帳簿にまとめていると、
ついついケチってしまい、
仕事に必要な投資をしなくなってしまうのではないか、
という、今考えるとトンチンカンな懸念もありました。
臭いものにフタ。
知らぬが仏。
そのような論理で、
現実逃避をしていたわけです。
とはいえ、
それで不安から逃れられたならまだマシですが、
全くそうではなく、
ぼんやりとした恐怖がいつも心の中にありました。
そして、その恐怖が勝手にどんどん膨れ上がって、
自分の思考を狭めてしまっていたように思います。
見たくない現実を見ないばっかりに、
不安が実態を超えてしまって、
本業に悪影響を与えていたのです。
よくいえば慎重な性格、
悪くいえばネガティブ思考が災いしました。
現状を変えるには、
行動していかなければいけないのに、
脳が萎縮してしまったかのようにビビってしまい、
何をするにも悩み込むようになっていました。
見たくないものを見ることから話がはじまる
その解決策は、帳簿づけです。
いまどのくらい赤字なのだろうか?
どれだけ売上があれば、とりあえずやっていけるのだろうか?
いまの状況なら、いつまで撤退せずに続けられるか?
これらは、見たくない現実です。
しかし、これらを確認することによって、
実態以上に膨れ上がった恐怖が、
現実的なリスクへと収束します。
そして、どうよくしていけばいいか?
の現実的な議論ができるようになります。
ドでかいホームラン級の売上を出さなきゃいけないと思っていたのが、
意外と、細かいヒットを積み重ねればよいのかもしれません。
明日にでも借金の取り立てに追われて、
ノコノコと情けなくサラリーマンに戻らないといけないんじゃと思っていたら、
案外、時間はまだ残されているのかもしれません。
もちろん、現実的に、
撤退を覚悟しなければならないのかもしれません。
いずれにせよ、
見たくないものを見ることによって、
精神論ではない、
本当の意味で前を向くための土台ができるのです。
その足がかりは、帳簿づけをすることです。
このことを身を持って経験できたのは、
私にとって大きな財産です。
内向的な方のなかには、
心配性で、石橋を叩いて渡るタイプの方も、
多くいらっしゃると思います。
私のように、
実態を超えた恐怖に手足を縛られないように、
見たくないものを見る勇気を持ちましょう。