法人化・法人成りすると増える社会保険料をどう考えるか?

法人化・法人成り

個人事業を法人化すると、
税金を下げることができます。

しかし、
社長への給料を上げると、
社会保険料が増えてしまいます。

この負担のバランスをどう考えるべきでしょうか。

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法人化すると、税金は減るけど、社会保険料は増える

個人事業を法人化する大きな目的のひとつが、
税金の負担を下げることです。

私の方にも定期的にご相談をいただく話題です。

たしかに、もうかっていればいるほど、
法人化すると、税金を下げることができます。

ざっとシミュレーションすると、このようになります。

※単位:万円
※40歳未満独身のひとり社長を想定
※個人事業の場合は青色申告(65万)、会社の場合、利益の85%を社長への給料に回したものと仮定
※個人の税金は、(所得税+住民税+個人事業税)の合計
※会社の税金は、(法人税+法人住民税+法人事業税)+社長個人の(所得税+住民税)の合計
(消費税は無視)

横軸を、年間の売上ー経費=利益として、
利益の増加にしたがって、税金がどれだけ増えるかを表しています。

すると、年間利益300万のところで、ほぼトントン。

以降、だんたんと会社の方が有利になっていきます。

この差がなぜ起こるかというと、
・個人の税金の税率が、儲かるほど上がりやすい構造になっている
(会社は儲かっても、比較的上がりにくい)
・給料として所得税を計算すると、税金が優遇される
があるからです。

一方で、負担が増えていくのが社会保険料。

同じようにシミュレーションすると、このようになります。

※単位:万円
※40歳未満独身のひとり社長を想定
※会社の場合、利益の85%を社長への給料に回したものと仮定
※個人の社会保険料は、(国民健康保険料+国民年金保険料)の合計
※会社の社会保険料は、健康保険料+厚生年金保険料+子ども・子育て拠出金の合計(協会けんぽ)

利益200万円くらいでだいたいトントンで、
以降は、一貫して会社の方が負担が大きくなっていきます。

個人の社会保険料は、国民健康保険料と国民年金保険料の合計です。

このうち、国民健康保険料は、
年間利益や世帯人数によって増加していくので、
儲けるほど増えていくものの、上限金額があるので、
あるところまでいくと、それ以上は増えません。

また、国民年金保険料は、
利益によらず、一定額と決まっています。

一方、会社の社会保険料は、
社長の給料をいくらにするか次第で決まってきます。

今回のシミュレーションは、
利益×85%を給料に回す、としています。

たとえば、年間利益300万円なら、
年間の給料は255万円。

社長の給料としては、物足りなすぎます。

それでも、個人事業よりも負担は上回る、
という結果になります。

会社の社会保険料にも、上限値はありますが、
高めに設定されているので、
それまではどんどん上がりつづけます。

税金と社会保険料を合計すると、
たいして変わりはない、という結果になります。

それならば、個人事業から法人化するメリットは本当にあるのでしょうか。

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年金保険料は、将来への投資になる

しかし、社会保険料が増えるといっても、
単純にデメリットとは言い切れません。

社会保険料は、

・年金保険料(国民年金保険料・厚生年金保険料)
・健康保険料(国民健康保険料・健康保険料)

に大別されます。

このうち、年金保険料については、
将来、年を取ったときにもらえる公的年金の原資になります。

つまり、将来への投資としての性質があります。

そのため、負担が増えるといっても、
その後、受け取れる額も増えることになるのです。

年金制度が今後、このまま維持されるかどうかについては、
さまざまな議論があります。

ですので、一口に大丈夫とはいえず、
「払い損」になる可能性もたびたび指摘されておりますが、
少なくとも、
制度自体が破綻してしまったり、
受給額が大幅に削減されてしまうことは
ないだろうと言われています。

この意味では、
法人化した場合に増える厚生年金保険料については、
無視はできないものの、
法人化の損得を考えるうえでは、
あえて考慮に入れない方がよいのではないかと考えます。

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健康保険料は税金と一緒

一方、健康保険料については、
税金の同様の性質を持ちます。

そもそも健康保険料といわれても、
ピンと来ないかもしれませんが、
病院に3割負担で受けられる
「健康保険証」
なら、お分かりでしょう。

この健康保険証を受け取るために払うのが、
健康保険料です。

この健康保険料については、
税金と同様で、
払う額が増えたところで、
受け取れる給付の内容に変更はありません。

「3割負担で医療を受けられる」というだけです。

健康保険税、という表現もあるくらいで、
税金と同様の性質を持つものなのです。

ですので、年金保険料と違って、
少なければ少ないほどお得、ということになります。

したがって、法人化を考えるうえでは、
税金と同じテーブルに乗せて比較をするべき、と考えます。

するとシミュレーションは、こちらのようになります。

※単位:万円
※40歳未満独身のひとり社長を想定
※個人事業の場合は青色申告(65万)、会社の場合、利益の85%を社長への給料に回したものと仮定
※個人の税金は、(所得税+住民税+個人事業税+国民健康保険料)の合計
※会社の税金は、(法人税+法人住民税+法人事業税+健康保険料+厚生年金保険料+子ども・子育て拠出金)+社長個人の(所得税+住民税)の合計
(消費税は無視)

見ていただくと、
ほぼ一貫して、会社の方が有利、ということになっています。

現実的には、社長への給料をある程度取らないと
生活が厳しくなってしまいますので、
年間利益500〜600万円
(社長への給料400〜500万円ほどを確保できる)
くらいを安定的に出せるくらいはほしいかな、
というところではあります。

法人化の議論は、
見方によって損得が変わってくるので、
複雑になってしまいますのが、
ひとつの指標として、検討材料にしていただければ幸いです。


【編集後記】

昨日は、Zoom面談など。

プロ野球、楽天の元気がなく、
私自身のメンタルにも露骨に影響が出ています。

せめて、若手に希望が見いだせるといいのですが。。

【一日一新】

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【昨日のYouTubeチャンネル】

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